伏し目がちながらも勁い眼差し。
ダークブラウンのニットも彼女に似合っている。
(続き)
夏の間は、色移りを恐れて、白しか着せない決心をしていたのに、
冬になれば、こんな色物を着せている。
むろん、下には長袖の白いアンダーシャツを着せる等、予防策は講じている。
撮影が終わるやいなや元の素体状態に戻してもいるし。
彼女を見ていると、笑顔や愛想、
女の子らしい身振り手振りは不要だと思えてくる。
何かに心を傾けている眼差し、
それが誰でも一番魅力的だと思う。
ふと、今日見た串カツ屋のお姉さんの顔が重なった。
十五年近く前からその店にいるから、もう最初の頃のような
付け睫毛の目立つ若い派手なお姉ちゃんではなく、
本当のお姐さんになっているのだけれど、
夕方、立て込んでくる前に青いゴム手袋を嵌めて、
あちらこちらのフィルターをブラシ片手に洗っていた。
(12月になったからなのか。)
その手際の良さ、眼差しの鋭さにただ見惚れてしまった。
誰かに指図されて始めたわけでもないし、嫌々やっている感じでもない。
綺麗なお姐さんの、手元を見つめる厳しい眼差しを見つめながら、
黙って2杯美味しく飲んで、店を出た。
西南の空の金星が、やけに美しく思えた。