新しい青いワンピース。
ウィッグをブラウン・ロングに戻している。
窓の外は急速に暗くなってきて、小学生の昔なら、
夕立ちが来ると思うような雲行きだった。
(続き)
この色。この雰囲気。
実モデルがブラウンだからなのかもしれないが、
彼女にはこのウィッグが一番似合っている。
西日の中の白いドレスばかり見ていたつもりでいる所為か、
鮮やかな青の美しさや
それに繋がる彼女の持ち味を忘れてしまっていたようだ。
ひと頃、彼女にパフスリーブの半袖ブラウスを着せてみたくなって、
あれこれ検索を繰り返していた。
ひらひらの多い白のブラウスはあっても、
サックスブルーのシンプルなものは見つからなかった。
暗がりの中の青いブラウスの女性に惹かれるのは
私の夢に繋がるからだろう。
夢は手の届かないもの、潰えるもの、失うもの…
そう思うばかりで、
叶えるものだとは一度も本気で考えたことがない。
それはいったい何故なのだろうか。
会いたいと思う人には会ってみる。
そんな格言じみた言葉をSNSで目にした。
なるほどなぁと思うものの、その会いたい人が50年近く前の人であったり、
若い自分自身である場合はどうすれば良いのか。
もう嘗てのように、心が掻き乱されるようなことはないが、
それでも埋火のようなものは、どこかにあって
夢の中や半覚醒の状態のときに
小さな声ながら遠く叫んでみたくなる。
暗がりの中の鮮やかな青。
成就することのない夢であっても
夢を見ないよりは幸せではないのか。
夕立にならないまま暮れてしまった次の朝、
夜の間に雨が降ったらしく、
早朝の空気には肌寒ささえ感じた。
夏はまだ終わるはずはないが、秋冷の朝も増えていくのだ。