(続き)
前開きの紫のワンピース。
この日、最初の衣装は上がニット、下はスカートを履いているかのように見えるワンピースだった。が、シリコンドールには難敵の、被りタイプ。袖を通しかけただけで、着せるのを諦めた。重さ 27 kg の人形を支えながら着せ替え作業を行うのは、やはり難しい。
タイトなシルエットは諦めざるをえなかったが、替わりの衣装の紫は、予想以上に、この人形に似合っている。夕暮れの静かな雰囲気を纏っている_そんなことを考えたりもした。
撮影直前まで眺めていた下村良之介の画集。娘が残していった古いフルートの輝き。いずれも、暮れなずむ時刻に相応しい。
彼女の瞳はグレーの筈なのだが、今日はヴァイオレットに輝いていた。
何か想っていることがありそうだ。その横顔に今は見惚れるしかない。