（続き）
久しぶりにカーテンを開いてみた。部屋の中が午後の陽光に満たされる。
着せてみたのは淡いベージュのコットンニット。この子も、私の判断では、首筋を見せるのが NG になっている。A級メイクの施されたヘッドと通常仕様のボディとの質感の違いが一度気になり始めると、どうにも無視できない。Ex-Lite Kayla 撮影時と同じように、ハイネックにして気になる部分を隠そうと考えるようになった。
それにしても、明るい光の中で眺める彼女の表情は、いつもより幼い感じだ。身体の比率は、それに反して実際よりも大人びて見える。ズームレンズ特有の歪みが関係しているのだろう。いつもの西の窓辺に移動させての撮影は、Frieda の時と同じように何か言いたげなのも面白い。
撮影の前後に、初めてブルートゥースのイヤホンを試してみた。
プレイヤーとの相性が関係するのか、接続するのに手間がかかるものの、少しばかり移動しても音は途切れない。音質の良し悪しを判断できる耳を持っているとは言い難いのに、有線でなければ音が悪いと思い込んでいたのは何だったのか。どこぞで仕入れてきた生半可な知識が禍したのだろう。
小さな音で流していたのは DAVID GILMOUR - JE CROIS ENTENDRE ENCORE 。亡くなって久しい父のことが思い出された。新しモン好きの父なら、ブルートゥースのイヤホンなど、「はしり」の段階で手に入れていたに違いない。今日のような明るい日に、亡くなった人のことを想うのも、妙な話なのだが。
掌に載せた小さな白いイヤホンが何とも哀しかった。
