The quiet beauty of the doll

等身大の人形写真をメインにして。

Alice38: Plastic robot

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この子の傍にあるゼンマイ仕掛けの青いロボット。

買ってもらったのは50年以上昔になるのかな…。

足は動くのだけれど、床に置いてやると止まってしまう。

横たえると、特有の機械音を立てて空を足搔いているが、

それも暫くの間でしかなく、すぐに動かなくなる。

(続き)

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梅雨入りを聞いた翌日は台風の影響による嵐になった。

枕元に置いている読書用スタンドの作り出した濃い翳が

この日には相応しい気がした。

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ロボットは実家の階段途中に作り付けた棚の上、

ロボットよりもさらに古いアンクルトリスの木製の楊枝入れは、

黄変しながらも食器棚の中に収まっていた。

ラクタのような二つが残されていたのは、母の感傷が働いたからなのか。

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モーターで動く今井科学のロボットが欲しかったのを思い出す。

頭部の蓋を開いてミサイルを発射し、

腕を回転させて赤い玉を飛ばすという仕掛けの全てがリモコン操作。

鉄人28号の漫画を読み耽った小学生には夢のようだった。

近所の2歳下の男の子が持っていたのも気持ちに火を点けた。

しかし、買ってもらえなかった。

多分、当時の玩具じみたプラモデルとしては高価なものだったのだろう。

その代わりに_という意味はなかったのかもしれないが、

しばらく経ってから、ゼンマイ仕掛けのこの青い「ロボット」が

母から充てがわれた。

全く釣り合わないと思ったことは確かだが、それから何年も

このロボットで遊んだことは確かだ。

少しくらいの坂道なら上れるように、罫書いた跡が足の裏に残っている。

その疵はコンパスの針でつけたように記憶しているが、

自分用のコンパスやデバイダーを手にしたのは中学校入学時。

技術の教材として購入した製図道具セットに入っていたものだった。

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解体を待つだけになった古い家には、もう何も残っていない。

それなのに、何か見落としてしまったものがあったような

後悔が続いている。

見つけられないものは、40年以上前に残してきた品物だけでなく、

どこかに閉じ込めたまま、目を逸らしてきた

私自身の気持ちも含まれている。

この子の青い目が見ているのは、忘れたことにしていた

遠い昔のあれこれなのだ。