人形作家兼書道の先生_青扇さまの書と共に。
(続き)
縦2m43cm。
普段、撮影に使っている西の窓の天井に
少し閊えてしまうため、斜めに立てかけている。
書の内容は、高啓の七言律詩「梅花」。
瓊姿只合在瑶台
誰向江南處處栽 誰か江南に向って 処処に栽えたる
雪満山中高士臥 雪は山中に満ちて
月明林下美人来 月は林下に明らかにして 美人来たる
寒依疏影蕭蕭竹 寒には依る 疏影 蕭蕭の竹
春掩残香漠漠苔 春には掩う 残香 漠漠たる苔
自去何郎無好詠
東風愁寂幾回開 東風に
調べてみると、高啓は明初期の大詩人である_とのこと。
古典から採られた語が多く、一読しただけでは私には理解できない。
詩の中に出てくる「美人」は梅花を指しているのだそうだ。
行書の文字が天井に届くさまを見上げながら
私はゴシック様式の尖塔を思い浮かべていた。
或いは、黒々とした針葉樹の森が果てしなく広がる北方の諸国を…。
この子を被写体とする機会が続いているが、この書に並べて
Mana 朗子_黒いドレスの少女を撮っておきたくなった。
80cm の球体関節人形でありながら、文字の連なりに負けてはいない。
黒いドレス姿だけではなく、
彼女のために誂えた振袖姿も残しておきたくなった。
或いは、秘仏扱いになっている Zinaida 夕湖を
晩夏の光の中で撮影してみたいという夢も。
五十六の漢字で作られた言葉の森は 、
意味するものも、姿の上でも
様々な想いに連なって、現し世を遠いものにしてくれる。