一か月振りのこの子。
いろんな感情が渦巻いていても、
彼女のビスクの頬は、いつもどおり柔らかそうに見える。
(続き)
最初は、こんな感じ。
林檎は彼女の前に置いていた。
途中から林檎に凭れる構図に変更した。
頬の様子を見ていて
木下利玄の短歌をふと思い浮かべた所為でもある。
街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る
この子なら、蜜柑よりも林檎だな
そんな他愛ない勝手ことを思いついたとたんに
レンズの向こうに、私だけの女の子が現れた気分になった。
相変わらず横顔に惹かれている。
何か他のことを考えているような
或いは、ここではない、どこか遠くのものへ想いを馳せるような
そんな眼差しに見惚れてしまう。
話すべき言葉が見つからなくても
視線が交わらなければ
美しい少女の傍にいても平気だ。
そんなことを考えるのだろうか。
林檎は秋の季語だし、冬の果物でもなんでもない。
考えてみれば、一年中店先にはあって、
妻が入院していた初夏の頃、
二日に一度購入して、毎朝半分ずつ食べていた。
それでも白いセーターとダッフルコートにしてやった彼女を見ていたら
林檎の香せり冬がまた来る_と呟いていた。
鼻持ちならない勝手な言い草なのだけれど。