"Kayla: Out of place" の続編。
部屋の中がすっかり暗くなってしまう直前、
場違いな気分が漸く薄れて、新しい思いが生まれ始めていた。
(続き)
この下書きを作っている私の傍に、
彼女は、この衣装のままで立っている。姿勢も変わらない。
それでも、今、実際に目にしている彼女と画像の彼女は、どこか違っていて、
どうしてこのとおりに写せないのか
訝しい思いが募る。
今の彼女はもっと柔らかな表情をしている。
横から顔を覗き込むと褐色の瞳が美しい。
ブレザー姿の若い女の子だ。
明るさを落とした天井設置のLED照明の為か、
Ex-Lite の欠点である顔のテカリやあちこちにある皺も
さほど気にならない。
しかしカメラを覗き込んでみると、やはりこれではダメだと思ってしまう。
大量生産(?)された、価格の上でもブロックバスター的な等身大ドールだから
画像検索すれば彼女の姿をあちらこちらで目にすることができる。
一目で分かるのに、どれも少しずつ違っているのが面白い。
美しく装った姿でいる様子を見つけたら、撮影者や投稿者がどんな人なのか
一応追いかけてみることにしている。
すっかり暗くなった部屋の中にいて
カメラを彼女に向けていたら
彼女が何か耳を澄ましているように思えてきた。
世界中に散らばった無数の Kayla。
既に生産終了となっていて、新しいタイプも生まれてこないし、
傷んでも修理の術がない彼女たち。
遠く散らばった無数の声は
彼女にはどんなふうに聞こえているのか。
私は、私と同じように彼女を見詰めているに違いない
オーナーたちのことを考えていた。
誰一人、お互いに出逢うことはないのだろうけれど。