前回の記事 "Yui: Light in midsummer" の装いに
少しだけ付け足す形で再登場。
八月の強い陽射しが
眩しさよりも翳の濃さを際立たせている。
(続き)
トップスはネックレスを足しただけ。他は同じ。
いろいろ変えたのは下半身。
フェイクレザーのスカート。黒い網タイツ。
赤いパンプスはポインテッド・トゥー。ピンヒールの高さは 10cm ぐらい。
100 denier のタイツのお蔭で、かなり冒険をした感じだ。
今回も翳の無い明るい画像を目指したのだが
今の気分にそぐわず、早々と撤退。
翳ばかり見つめていた。
何年か前までの八月は、外仕事のために真っ黒に日焼けしていた。
紫外線対策としてサングラスもしていたので、
信号待ちの横断歩道で、一度、交通整理の巡査に声を掛けられたことがある。
誘い込まれるような笑顔だったが、
職務質問だったのでは_と後になって思い当たった。
そんな仕事帰り、週に二度ほど寄道していた立ち飲み屋で、
よく顔を見かけたニッカポッカ姿の職人を思い出す。
彼が食べるものは決まっていて、冬はおでんの大根と玉子。
それが夏の間は(おでん鍋が出ていない時期は)
「ウナギのかば焼き(半分)」に変わる。
飲むのは瓶ビール一本だけ。
彼の顔を確認すると、飲み屋の大将は、瓶ビールの栓を抜き、
半分に切った冷凍のかば焼きを電子レンジに放り込んでいた。
そのため、店に入ってから出るまでの30分ばかり、全くの無言だった。
たまに同業の知人に、小声で挨拶するぐらい。
私も何度かその「ウナギのかば焼き(半分)」を肴にしたことがある。
200円ぐらいの品書きが並ぶ店の中で、
輸入物とは言え破格の600円。
肉厚で、タレも旨かった。
私が仕事を辞めた同じ頃に、その店も無くなり、
飲み屋でウナギを肴にする縁はなくなった。
土用の丑の日という言葉に乗せられることはないし、
絶滅危惧種云々の議論にも与しないが、
夏の間、仕事帰りに毎日、黙々とウナギを食べていた人の顔を思い出す。
店が無くなった後、近くの駅の売店の前で
缶ビールを飲み干している姿を、一、二度、見かけたことはあるが、
当然ながら、そこにウナギはない。
八月の光と濃い翳と。
彼女の横顔の硬い表情を眺めていたら、
電子レンジから出されて、皿ごと熱かったウナギのことや
それを瓶ビールで流し込んでいた
ごつい人を思い出す。
この遣り場のないような気分は何なのか。