白しか着せない心づもりでいる夕珠。
新しいブラウスを用意したが、一つは被りタイプだったため諦める。
もう一つはギャザーたっぷりの前開きタイプ。
袖もゆったりしていて、巫女装束の小袖を彷彿とさせた。
(続き)
スカートも透け感のある白いレースのものを着せている。
その膝に赤い布を置いてみたのは、
映画「君の名は。」の
口噛み酒奉納の場面を思い出したから_という所為もあるのだが、
実家近くで「子供神輿を担ぎませんか」と呼びかける張り紙を見たことも
関係している。
町内に子供が溢れかえっていた昔にも、
そんな呼びかけがあったのだろうか。
知らない内に毎年どこかで担ぎ手は決まっていて、
一般人は町内会で購入する券を持って御神楽を上げてもらうのが、
唯一可能な祭りへの積極的参加だった。
その御神楽も、小学校3年生の時に、妹を連れていったのが最後。
夜店に行ったのは中学校1年生までだった。
雑踏嫌い、その他…。祭りには、つくづく縁が薄いとしか言いようがない。
それでも、間近で神楽舞を見詰めた記憶は
鈴や笛の音と共に甦ってくる。
妹と一緒に神楽殿から下がる時、誰かに囃し立てられたこと、
帰りがけに、茶屋をしていた友人の家で
冷たくて甘いハト茶を飲ませてもらったことも思い出した。
夕珠の膝に赤い布を置いただけで
昨日まで忘れていたことが、つい先日のことのように思われてくる。