白しか着せない決心をしたのに、薄緑のドレスを着せてみた。
ウィッグもシルバーホワイトに戻している。
(続き)
むろん白の裏地は付いているし、
シリコンの肌には直接触れないように気をつけている。
立ち姿を眺めてみたいとも考えるが、
レディースSサイズを胸の大きさで着ているようなものだから、
無理はしない。
スカートの膨らむ様子は 160cm ボディの Iris ででも確かめてみるつもりだ。
彼女も今は夕珠と同じ
シルバーホワイトのウィッグを着けていることだし…。
賢そうな顔をしている。
成績優秀な女の子に惹かれるのは、私が高校の授業についていけなかったから。
魅力的な題名の、誰かの小説の主人公のように
学校の勉強ができなくても、
何か他に、女の子の目を惹くようなものを持っていれば、
別の好みも出来たのかもしれないが…。
今日の彼女は、
左耳を覗かせている。
風が吹いて、一瞬だけ見えたのなら、
その日の単なる僥倖として記憶にとどめるだけだが、
こんなふうにずっと耳を見せているのは、普通では考えられない。
賢い女の子が、髪を搔き揚げて
耳を曝すようなポーズをとることは、私には想像することさえ叶わない。
だから人形を用いても、そんなことをする気にはなれない。
ふと、2歳下の妹の耳朶を思い出した。
小学校へ上がる頃の私は、妹の耳朶くらい、小さくて柔らかく、
可愛いものはないと考えていた。
甘い、いい匂いがしたという記憶があるのは、
鼻先を近づけたことがあるからなのだろうか?
妹は、兄とは違って理系が得意。
中学校では、お兄さんがいたの知らなかったと言われるくらい
別格の成績を残し、可哀想なくらい父に溺愛されていたが、
普通に結婚して、今ではどこかの国の
アイドルグループのツアーに馳せ参じる
おばちゃんになっている。
同じ血液型ながら、その行動力も私には備わっていない。